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小学校給食無償化における両候補の違い

今回の市長選挙でおもしろいことが起こりました。

両候補の選挙公報の一番に掲げた公約が、まったく同じだったのです。

 

それは、「小学校給食の無償化」です。

しかし、文言は同じでも、実はその中身が違うのです。

一言でいえば、それは市長としてのこの施策に対する「断固たる決意」の差です。

 

小学校給食の無償化の経緯

この一年間、堺市では小学校給食の無償化は、以下のような経緯を辿ってきました。

昨年6月…二学期の無償化を発表(2学期のみ)

昨年12月…三学期の無償化継続を発表

本年4月…何もなく一学期は有償に戻る

本年5月19日…永藤市長が公約として「小学校給食の無償化」を発表

 

記者会見でのやり取りも含めると、永藤市長は再選すれば、今年度二学期からの無償化の再開を考えているようです。

となると、この一年間あまりで、有償→無償→有償→無償と繰り返すこととなります。

 

現職市長であれば、その気があれば今年度一学期も無償化を継続することはできたはずですが、それはしませんでした。

一方、野村候補は今年度一学期まで遡っての無償化(つまり返金になるのでしょう)を主張しています。

 

それにしても永藤市長は、「小学校給食の無償化」を訴えながら、なぜいったん有償に戻したのでしょうか?

 

永藤市長はなぜいったん有償に戻したのか?

公約に訴えるということは、必要だと考えるからであり、ならば今年度の一学期も引き続き無償にすればよかったのです。

 

そうしなかった理由は以下の3つが考えられます。(この3つ以外は、考えられない)

 

1つ目は、選挙公約にするためです。

「小学校給食の無償化」という一定インパクトのある公約を打ち出すには、現状が「有償」である必要があります。

選挙のために、いったん有償に戻した・・・。

こんな憶測も飛び交っていますが、さすがにそこまでのことはしないと思いたいものです。

 

2つ目に考えられるのが、野村候補の公約に被せるためです。

野村候補(当時は予定候補)は4月に小学校給食の無償化を打ち出しました。

一方、永藤市長の公約発表は5月19日、異例の告示直前の最終のウイークデーでの公約発表でした。相手の出方をギリギリまで見定めて、それに被せてくるというのはこの世界にはよくある話です。

これは十分に可能性のある話ですが、だとしたら、現職市長としてちょっと格好悪いなあと思います。

 

3つ目に考えられるのが、国からの交付金の目途がついたためです。これは言い換えれば、堺市のお金を使う気がなかったためとも言えます

そもそも昨年度の2学期・3学期の無償化も、国からの臨時交付金を充てたものでした。一方、今年度の予算審議の段階では、そのような臨時交付金は決まっていませんでした。だから無償化を継続しなかった(有償にした)。そして、今年度に入って交付金の目途がついたから、また無償にする。こういうわけです。

 

8割がたは3つ目、そして心情的に2つ目も少し・・といったところだと私は見ています。

なお、記者会見の中でご本人は3つ目の理由を挙げていました。

 

両候補の無償化の違い

さて、そうなると、両候補の「小学校給食の無償化」に対する姿勢の違いが浮き彫りになります。

 

永藤候補は「国がお金を出すならやる」。

野村候補は「堺市がお金を出してでもやる」。

 

ということです。野村候補は、交付金の目途がついていない時点(4月)から訴えていました。

 

となると、永藤候補の小学校給食の無償化は今年度いっぱいで終わる可能性もあります。現に公約でも慎重な注釈が付いています。

少なくとも、『臨時交付金頼り』の姿勢でいる限りは、今年度と同様に『来年度も一学期だけ有償』となるかもしれません。堺市の当初予算作成時点では、国の動きが決まっていないケースが多いですからね。

 

人口誘導を図るには安定性が大事

子育て支援が人口誘導に繋がり、人口誘導が税収増に繋がるという事例は数多あります。

しかし、それが「国頼り」でやったりやらなかったりを繰り返す状況では、「その施策をアテにした定住」などできるはずもなく、人口誘導には繋がりません。

 

実際のところ、小学校給食の無償化は、国の恒久的な施策として実施される可能性が少なくありません(そうなれば、堺市の持ち出しはそこで終了します)

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/387527

※TBSネットニュースより

 

だからといって国の決定を待ってからでは、全国一律・横並びでの実施となり、これまた人口誘導には繋がりません。

 

首長には、財政的なリスクを背負ってでも国に先行して実施していくのだという胆力が必要であり、そんな自治体こそが「子育て先進市」としての名声と果実を独占していけるのだと私は思います。首長には、子育てに本気で投資するという、断固たる決意が必要なのです。

 

野村候補の無償化にはオマケも

給食がタダになるだけでなく、野村候補の政策には「プラスα」があります。

それは、「低アレルゲンメニュー、有機・無農薬・堺産食材の積極採用」です。

これらをやろうと思うと、食材費の増加は避けて通れません。有償(=食材費は保護者負担)であれば、なかなか合意を得づらい課題となってしまいますが、無償化する(=公費負担とする)ならば、話は違います。

「安かろう、悪かろう」ではなく、公費負担だからこそ多少食材費が増えても、思い切って子どもたちの健康や食育、堺市内の農業振興にも配慮した給食にできるのです。

 

永藤候補と、野村候補の双方の公約に掲げられた「小学校給食の無償化」の、大きな違いです。ご理解いただけましたでしょうか。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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