曜日によって違う学校に通う学校群
こんにちは。堺市議会議員のふちがみ猛志です。
堺市長選挙の活動期間も残すところあと2日です。
昨日、永藤市長の肝いり事業である「学校群」についてツイートしたところ、かなりの反響がありました。
https://twitter.com/t_fuchigami/status/1663694075030298625?s=46&t=o50eEUFpxmQMqOF1m8uaOA
その時に使わせてもらったイラストが以下のものです。
そこで寄せられたご意見、ご指摘も踏まえて、改めて発信したいと思います。
学校群とは?
ここに、堺市長と教育長、教育委員とで行う堺市総合教育会議の資料があります。
総合教育会議は市長部局が所管する教育の中枢的な会議です。
ここで打ち出されたのが、「新たな学校のあり方」としての「学校群」です。
おそらくこの資料を見てもちんぷんかんぷんだと思います。
「中学校区を一体的にマネジメントする小中一貫教育体制の構築」を目指し、そのための「学校群」だそうですが・・
簡単に言えば、
・中学校とその校区にある小学校を、一つの「群(むれ・チーム)」と捉える。
・その「群」で、人・予算・教育方式等の「ソフト」と、学校施設等の「ハード」を統合・共有していく。
というものです(まだわかりにくいか(汗))。
ソフトの統合(あるいは連携)は、これまでも大なり小なり進められてきたものであり、私もこれについては、程度はともあれ、進めればいいと思っています。
そして、現時点ですでに「学校群のモデル実施」として5つの中学校区が選定されていますが、それはソフトの面での実施です。
私が問題視しているのは、学校群が最終的に目指している「ハードの統合」、とりわけその主たる選択肢である「キャンパス方式」です。
子どもはコマ?驚愕のキャンパス方式
堺市教育委員会は「学校群」の「キャンパス方式」について、以下のような資料を提示しています。これは公式資料です。
特別教室を使用する教科を行う学校が限定される
体育を行う教科を行う学校が限定される
児童生徒は日を単位としてその学校に通う
との記述があります。
わかりますか?要するにこういうことです。
※※※
A中学校とその校区にある、B小学校・C小学校を一つの「群」とし、
美術室と音楽室はA中学校にだけ。
理科室と体育館とプールはC小学校にだけ。
B小学校の児童は、音楽のある日はA中学校に。理科の実験や体育のある日はC小学校にと、日によって違う学校に通学するのです。(その日の途中で移動するのではなく)
※※※
※まさに冒頭のこのイラストの通りです
公式資料によれば、「専門性の高い指導が促進される」ことと、体育館等の「大規模改修、改築費用の削減」がメリットのようですが・・・。
キャンパス方式の大きな問題点
すぐに想像できるのが、子どもたちへの負担です。
今通っている小学校ではなく、曜日によって別の小学校や中学校に通うことを想像してください。多くの子にとって、通学距離が長くなります。当然、家を出る時間も、帰ってくる時間も日によって変わるので、保護者にとっても日々の生活に影響が出ます。
特に低学年にもなると、その日に行く学校を間違える子は出やしないか。
途中で迷子にならないか。事故のリスクが高まるのではないか。
給食はどこで食べるのか。
放課後の学童保育はどうなるのか。
不登校ぎみの子はますます足が遠のくのではないか。
体育館が減らされると災害時の避難所はどうなるのか。
などなど疑問は尽きず、これらのデメリットを上回るようなメリットは、到底感じられません。この「キャンパス方式」は、とんでもない計画だと思っていますし、これを知った多くの保護者の方がそう感じていることでしょう。
プールくらいであれば統合(共有)は可能かもしれませんが、それは個々の学校の状況に応じて検討すればいいだけです。
他の方式の物理的制約
私のツイッターなどには、「キャンパス方式以外にも選択肢はある」との指摘がありました。
たしかに、公式資料には他にも具体的に「一校方式」「分校方式」が示されています。
「一校方式」は、A中学校・B小学校・C小学校を、すべてA中学校にまとめるというものです。これはアリだと思いますし、すでに堺市内でもそのような一貫校が2校あります。
ただしこれは、B・C小の児童数(教室数)をすべてA中学校に受け入れられることが前提です。
A・B・Cがすべて小規模だという場合に限られますから、これを堺市全体に適用させるのは不可能です。
もう一つが「分校方式」です。
B小・C小の5・6年生がA中学校に通うというものです。
これもA中学校の生徒(児童)数が、現在の3学年分から5学年分に増えるわけで、それだけの余地がある中学校に限られます。これも、全市での適用は不可能です。(また、ここでメリットに挙げられる「発達段階に即した指導」に繋がるのか、私にはよくわかりません・・。)
他、まったく真っ白な「その他」や、キャンパス方式と分校方式の「ハイブリッド方式」も選択肢のようですが(真っ白なものが選択肢と呼べるのか・・)、いずれにしても、もしこの「学校群」を全市に適用するならば、「キャンパス方式」を一部であれ採用することになるはずです。他の方式は、全市適用が物理的に不可能だからです。
争点化すべき理由
野村ともあき候補は、当初から公約に『学校群の見直し』を掲げていました。
また、永藤ひでき候補も『「新たな学校」推進』を掲げています。これは「学校群」のことです。
子どもへの影響の大きい事業ですし、両候補が相反する主張をしているわけですから、まさに「争点」です。
中には「渕上は議会で質問していないのに」などという、まったく筋違いな批判もありますが、議会で質問していないことは発信しちゃいけないんでしょうか??
議会の質問時間には限りがありますし、維新の会が執拗に質問時間の削減を推し進めてきたこともあり、私たち少人数の会派はそのやりくりに大変苦労しており、「取り上げたいけど取り上げられない」テーマがいくつもあります。
私はこの「学校群」については、教育委員会との平場のやり取りの中で、いくらでも問題を指摘してきました。会派としてもです。
とは言うものの、今まで私自身が議会質疑で取り上げなかったのは、取り上げたものに比べ、その時点での優先順位が高くはなかったのも事実です。重要ではあるが、緊急ではない、という感じですかね。また、同じ会派の小堀議員が文教委員会で「学校群の経済性優先の側面」に対し、警鐘を鳴らしてくれていましたし。
それに、ソフトの統合や連携までは先述の通りヨシとしていますし、ハードについては率直に言って「こんな荒唐無稽な事業は実現するわけない」とタカをくくっていたことも否めません。旗振り役だった教育長が任期途中で退任されたことも、その理由の一つでした。
ところがその「学校群」が、市長のマニフェストに堂々と掲げられた上、NHKの候補者インタビューでも力強く語られたのです。
ああ、本気なんや。これはいくら荒唐無稽であっても、ゴリ押しする強烈なアクセルになってしまう・・。私の危機感は急激に高まりました。
堂々とキャンパス方式を主張すべき
維新の会の公式アカウントが私の名を挙げて反応したのには、少々驚きました。よほど触れられるのが嫌だったのでしょうか。
※先進的やったらええってもんちゃうで(byふちがみ)
これまで述べたように、「日替わり通学」は私の主張ではなく、市が正式に発信しているものであり、また容易に想像できるデメリットがたくさんあります。なのに「不安を煽る悪質な印象操作」とは何なんでしょうか。
ならば、堂々とキャンパス方式のメリットを説明し、「不安はご無用」と主張すればいいだけです。
あるいは、それを説明できないならば、さっさと「キャンパス方式」を撤回すればいいだけです。それだけで「不安」はほとんどなくなるはずです。
教育現場が抱えるそもそもの問題は?
教育現場はいま、たくさんの問題を抱えています。その解決、改善に「誰の目にもわかる形の変化」を求める気持ちはわかります。「改革だ!」と言えるような。
でも、私が思う解決、改善の処方箋は、「人を増やす」という極めてシンプルかつ地味なものだと思っています。
教員しかり、SSWやSCなどの専門人材しかり、地域のおっちゃんやおばちゃんも含め、子どもにかかわる「人を増やす」ことだと思っています。
堺市は年度初めで教員の欠員が50名以上という深刻な事態にあります。
永藤候補も野村候補も、共に子育て・教育をマニフェストのトップ項目にしていますが、その中身を見ると、永藤候補はこの「人員不足」についての記述がありません。
一方で野村候補は、「教員不足の解消」を大々的に取り上げている他、専門人材の増員も掲げています。
「教育は人なり」を地で行く野村候補(とそのマニフェスト)に、私は大きな期待を寄せています。
そして同時に、「学校群」の推進に膨大なマンパワーが割かれ、様々な歪を生んでしまっている現状を大いに危惧しています。
堺市長選挙はこの「学校群」を止められる、またとないチャンスなのです。
なお、動画でも取り上げてみましたので、ぜひこちらもご覧ください。
堺市議会議員ふちがみ猛志
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