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通す気のない条例案

2月16日(金)、総務財政委員会の閉会中審査で、維新の会が提出していました「堺市職員の政治的行為を制限する条例」に関し、参考人招致が行われました。

 

国際人権法、行政法のそれぞれの著名な大学教授が参考人招致に応じてくださり、同条例への見解を述べられました。

 

両名ともに、堀越事件(内容は割愛します)の判例を基に、「表現の自由、思想信条の自由、政治活動の自由の重要性」や、「公務員にも政治活動の自由が認められていること」を述べられ、同条例案の問題点を指摘し、違憲の恐れにも言及されていました。

私たち議員の存在・権限もこの憲法に由来しているのです。改憲・護憲の議論はもちろん、この憲法にまつわるあらゆる議論には、私たちは畏敬の念をもって向き合わなければならないと、法学部出身ながら改めて痛感したところです。

 

 

さて、気になったのが、提案会派である維新の会の姿勢です。

 

 

なんと驚くことに、維新が参考人を呼ばなかったのです。

 

参考人招致は、議論をより深めるために、有識者を呼ぶものです。

基本的には、それぞれの会派(や政党)が、自身の主張を補強する目的もあります。ですから、この条例案を通したい維新こそが、真っ先に参考人を呼ぶべきなのです。

 

これまでの本条例案の質疑における、維新の会の答弁は、かなり杜撰なものでした。このところ、明らかに本条例案の議論が維新にとって不利な方向に進みつつありましたが、ここで有識者が、条例案を後押しする論陣を張ったならば、ひょっとすると流れが変わったかもしれません。参考人を呼ばなかったのは、形勢逆転のチャンスをみすみす放棄したのと同じです。呼ばなかったばかりか、呼ぼうとする気すらなかったように思います(委員間協議を見る限り)。

 

そもそもこの条例案は、提案当初からやる気が感じられませんでした。

 

府の条例をコピペし、ろくにチェックもせず、条文に「市町村」という文言が残ってしまっていたり(堺市内に市町村はない、当たり前ですが)、質疑で指摘した問題点が、再提案の際に修正されていなかったり、合意を得るための事前協議が一切なかったり・・・。

 

そして、今回の「参考人を招致せず」です。

 

細かいことを言えば、この日の参考人招致で、総務財政委員でない議員が何人も傍聴に来ていましたが、ついに維新の議員は一人も現れませんでした。

例え否定的なものであっても(いや、否定的なものだらこそ)、有識者の条例案への見解を学ぶことは、条例案の弱点を克服し、成立を目指していく上で、またとない機会だったと思います。

 

なのに・・・、です。

 

おそらくこうした姿勢は、この条例案の提案を、やりたくてやっているのではなく、上からやらされているからなのでしょう。準備不足、身が入らない、通す努力をしないのも当然です。

 

しかし、そんな内部事情があったとしても、こちらの知ったことではありません。

 

条例案を提出するということは、議会に対して、「議論してください」とお願いをする立場です。

 

主義主張が違えども、誠実であってもらいたいですし、それがこの態度というのは、議会を冒涜しているようにしか思えません。

「身を切る改革」を唱えるならば、通す気もない条例案に付き合わされる、議会事務局や関連部局の職員、我々議員の身にもなってもらいたいものです。これを改めるだけで、随分と経費が浮くのではないでしょうか。

 

ぜひ、真摯な姿勢で、議論し合いたいものです。

 

 

と、本論はここまでなのですが、蛇足ながら、少し書き加えます。

 

ここまで書くと、間違いなく維新の会の支持者の皆さんが、SNS上で私に反論してくると思います。それはそれで結構ですが、ぜひそのエネルギーを維新議員にも向けてもらいたいと思います。

支持者の皆さんは、維新の政策を支持されているのでしょうし、その政策実現の重要なターニングポイントで、参考人を呼びもしないというのは、まさに支持者の皆さんへの背信行為ではないでしょうか。「やる気をもって、政策実現に取り組め!こんなこと言われて悔しくないのか!」と、私が維新支持者だったら叱咤するところだと思います。

そうしたことには目をつむり、「維新を批判する奴は、みな敵」とばかりに、維新議員への批判の防波堤になり、批判者へ批判返しばかりされるのならば、ますますその内側にいる議員は安心し、「議会の中まで見られてやいまい」と、そのいい加減な姿勢は改まらないでしょう。そして、支持者が望む政策実現(議会での合意形成)は、ますます遠のいていくでしょう。

 

私は維新そのものが嫌いなのではありません。これはと思う主張や、議会で注目している議員さんもいます。委員会で維新の議員さんの主張に同調したことだってあります。ただ、(堺の維新の)組織としてのこうした議会への不誠実な姿勢には、強い憤りを覚えるわけです。

 

ただただ、お互い【誠実に議会に臨み、議論を交わしたい】

そのことを付け加えて、終わりたいと思います。

 

 

 

 

堺市議会議員  ふちがみ猛志

意見・提案