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堺市の財政をどう見るか⑤まとめ&おまけ編

「堺市の財政をどう見るか」を4回シリーズでお伝えしてきました。

 

改めてポイントをまとめた上で、私なりに思うところを「おまけ」として書き加えたいと思います。

 

【4回シリーズのまとめ】

1)堺市は借金は少なく、貯金はほとほどで、毎年のやりくりはしんどくなっている

2)しんどくなった主要因は住民サービスの拡充と少子高齢化、短期的にはコロナ(ハコモノではない)

3)短期的な財政課題は閣議決定済みの臨時交付金や、過去の行革実績から見れば、厳しくともとも乗り越えられるはず

4)中長期的には固定経費の見直しと、基金の適正規模についての議論が必要

5)財政は多面的に見る必要があり、前市政は健全な面を、現市政は厳しい面を強調しすぎのきらい

 

となります。ここから見始めた皆さん、詳細はぜひシリーズ①~④をご確認ください(ブログの最後にリンクがあります)。

 

では、おまけに移ります。

【おまけ】

このブログを書きながら、つくづく思ったのが、

①政治家の良心とは?

②行政の役割とは?

③税源涵養とは?

ということです。

 

【政治家の良心】

財政とは、一般市民にはなかなか取っつきづらく、私自身もそれを究めているわけでは決してありませんが、議員でも初歩的なところを理解できていない方がたくさんいます。

ゆえに、市民に対する発信においては、知識はもちろん、「良心を持って」、多面的に丁寧にやるべきだと思います。

ハッキリ言えば、「その気になれば市民を騙せてしまう(ことがある)のです。

 

まとめのところで、「前市政は健全な面を、現市政は厳しい面を強調しすぎのきらい」と書きました。これくらいは、それぞれの解釈や、一定の政治的アピールの範疇のようにも思いますが、例えば、①貯金編で触れたような「財政調整基金だけを切り出した『少ない!』アピール」や、②借金編で触れた「臨時財政対策債を一緒くたにした「増えている!」アピール」は、よほど知識がない議員なのか、あるいはよほど悪意を持ってされているのか、同じ議員として悲しくもなります。

 

古今東西の権力者の常として、「前の権力者を悪者にする」「現状の危機を煽る」という人気を取るための手法があります。権力者の本能と言ってもいいかもしれません。

もちろん、前市政の問題点はしっかりと批判すればいいのですが、事実を捻じ曲げたり、必要以上に誇張するのはどうかと思います。それが過ぎると、現市政が道を誤りかねません。事実とは言い難い過度なハコモノ批判は、現市政における適正な公共施設の配置や更新を阻害することになりかねませんし、市債の増減への過剰反応は、健全な市債発行をも阻害します。

 

市民の皆さんは、先述の「権力者の本能」を知って頂いた上で、冷静、かつ多角的に情報収集して頂きたいと思います。私のこのブログも、鵜呑みにする必要はありません。そして何よりも私自身は、政治家として「良心を持った情報発信」を心がけていきたいと思うのです。

蛇足ですが、維新の皆さんが批判する「ハコモノ」の中には、いま維新にいる議員さんが要望して建設に繋がったものや、かつて彼らが支持した案よりうんと安く作ったものもありまして、この批判が「良心をもった情報発信」なのか、疑問を持たずにはいられません。

 

【行政の役割】

行政の役割は、「貯金を増やすこと」でも「借金を減らすこと」でもありません

当然ながら、「市民生活を守ること、よりよくすること」が役割・目的であって、そのための手段として「安定かつ公正・公平な行政サービス」が必要となり、さらにその手段として「適正な貯金と借金」が必要となってくるのです。

ですから、目先の借金や貯金の増減に目を奪われて、市民生活が破綻したり、行政の公正さが失われることなどは、あってはならないのです。

 

このコロナ禍にあっては、国も地方自治体も、相応の財政出動が必要です。財政再建は市民生活が戻ってからでもできますが、市民生活が破綻してしまえば、財政の健全化は不可能です。市民生活が厳しい時には財政出動し、楽になった時に財政の健全性を取り戻す、というのが基本であるはずです。

国とは違って、赤字国債を発行できませんし、通貨発行に関われませんし、まして堺市は交付団体ですから、できることには限りがあるわけですが、それでも私は言いたいのです。

「貯金・借金の増減にビクビクしている時ではない」と。

 

【税源涵養】

税源涵養とは「安定した税財源を確保すること、作り出していくこと」です。

何かに税を投入したとしても、その事業が税収の増加を生み、また税として戻ってくるような場合に、「税源涵養に資する」というような言い方をします。

まちづくりに税金を投じても、そこに人が住み、人口が増え、市民税が増えれば「また戻ってくる!」というような時に使います。「将来への投資」と言ってもいいかもしれません。

 

この「税源涵養」という視点は非常に重要で、厳しい財政状況、先細りの少子化社会においては、同じ税財源を投入するなら、「どれだけ将来の税源涵養に資するか」ということをよく見極めなければなりません。

 

永藤市長もよくこの言葉を使うのですが、私が違和感を覚えるのは、その使う対象がほとんど「観光分野」であることです。百舌鳥古墳群ビジターセンターを作ること、古墳を見渡せる気球を飛ばすこと、万博やカジノに絡んでベイエリアを整備すること、、、、などなどです。

これらが「税源涵養に資するものではない」とは言いませんが、私は観光客を増やすことよりも、定住人口を増やすことの方が、より「資する」と思っています。

1人の観光客が堺市でお金を落とすのは多くの場合、1日か2日。

1日の市民が堺市でお金を落とすのは365日、そして何年も何年も、さらに時として何世代も。それも消費するだけでなく、直接納税もするのです。

 

もちろん、観光客を1人増やすことと、定住者を1人増やすことではその大変さも違うわけですが、こと「税源涵養」の話題になった時、永藤市長が前者(観光)に傾注しすぎて、あまり後者(定住人口)を意識していないように思えてならないのです。コロナ禍でも観光関連の事業はしっかり守る一方で、子育て支援を打ち切ってしまったことは、その典型と言えます。

 

何をすればどれだけ定住人口が増えたのか、とするエビデンス(根拠となるデータ)はなかなか見いだせません。だからこそ、どうしても軽視されがちなのですが、現実に明石市のように、子育て支援に注力して人口増加している自治体がありますし、堺市もこれまで力を入れてきたところ、(その成果と断定するのは難しいですが)全国平均より高い出生率となりました

 

移動が抑制されるコロナの時代、人口が減少する時代だからこそ、定住者に目を向けた「税源涵養」の議論が必要だと思っています。このあたりの「税源涵養」の捉え方の違いは、議会でも議論していきたいテーマですし、予算編成権者に都合よく使い分けされないよう、議会としても注意が必要です。また、有権者からすれば、政治家選びの大事なポイントにもなるだろうと思います。

 

以上、長々とおまけを書きました。

今後も財政の議論は、堺市議会の中心的テーマであり続けると思われます。

 

私は政治家としての良心を持ち、行政の役割を真ん中に置き、何が税源涵養に資するのかという点を見据えながら、この議論を続けていきたいと思います。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志 

 

シリーズ①~④はこちら↓

①貯金(基金)編https://fuchigami.info/%e5%a0%ba%e5%b8%82%e3%81%ae%e8%b2%a1%e6%94%bf%e3%82%92%e3%81%a9%e3%81%86%e8%a6%8b%e3%82%8b%e3%81%8b%e2%91%a0%e8%b2%af%e9%87%91%e7%b7%a8/

②借金(市債)編

https://fuchigami.info/%e5%a0%ba%e5%b8%82%e3%81%ae%e8%b2%a1%e6%94%bf%e3%82%92%e3%81%a9%e3%81%86%e8%a6%8b%e3%82%8b%e3%81%8b%e2%91%a1%e5%80%9f%e9%87%91%e7%b7%a8/

③固定経費編

https://fuchigami.info/%e5%a0%ba%e5%b8%82%e3%81%ae%e8%b2%a1%e6%94%bf%e3%82%92%e3%81%a9%e3%81%86%e8%a6%8b%e3%82%8b%e3%81%8b%e2%91%a2%e5%9b%ba%e5%ae%9a%e7%b5%8c%e8%b2%bb%e7%b7%a8/

④来年度予算編

https://fuchigami.info/%e5%a0%ba%e5%b8%82%e3%81%ae%e8%b2%a1%e6%94%bf%e3%82%92%e3%81%a9%e3%81%86%e8%a6%8b%e3%82%8b%e3%81%8b%e2%91%a3%e6%9d%a5%e5%b9%b4%e5%ba%a6%e4%ba%88%e7%ae%97%e7%b7%a8/

 

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