挑戦的でなかった未来への挑戦
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
決算議会が始まっています。
議論の中心になっているテーマの一つが「自動運転バス」です。
え、また自動運転バス?
半年前の予算議会でさんざん議論したんじゃ??
そうです。
さんざん議論したんです。
さんざん議論したのに、さんざんな結果になったから、また議論しなきゃいけなくなったんです。
国交省に採択されなかった堺市
永藤市長肝いりの「自動運転バス」事業については、これまでこのブログや動画でも発信してきました。
市民ニーズ・利用者ニーズに適わない独りよがりの計画に、議会がNoを突き付けたのに、市長は再議権を行使してゴリ押し。
このまま進むのかと思われたのですが、今度は国交省がNoを突き付けたのです。補助金の不採択です。
※ABCニュースより。以下リンク。
https://news.yahoo.co.jp/articles/288264ee3b6d684c8293b65e8fc312f7f8d2b690
国交省の自動運転バスに関する補助金は、実に99もの事業が採択されます。自治体の数は90を超えます(複数事業の採択された自治体があります)。
※採択事業(自治体)一覧
それだけの自治体が採択されていながら、政令市である堺市が採択されないなど、前代未聞の事態、恥ずべき結果と言っていいでしょう。
そして堺市当局は、国の補助金を得られなかったことを受け、今年度に予定していた自動運転バスの実証実験を中止したのでした。(永藤市長は来年度以降の再開を目指しています)
※これまでに発信した関連ブログ・動画※
ブログ「削減した自動運転バス予算」
ブログ「あまりに軽かった再議」
動画「市長ゴリ押し“自動運転バス“について」
挑戦的でないから不採択?
なぜ国交省に採択されなかったのか?
堺市当局の説明はこのようなものです。
「国交省は2027年の自動運転バスの運行を目指しているが、堺市の計画では本格運行が2030年だったから。」
国交省が求める早期運行に対応できていなかったというわけです。(国交省は正式に発表していないので、ヒアリングに基づく堺市当局の分析です)
あれ???
永藤市長が自動運転バスをゴリ押しした理由って、何でしたっけ??
「未来への挑戦」です。堺市が未来へ挑戦する姿勢を示すんだという、極めて抽象的な理由でもって、指摘され続けた具体的な問題点から目を背けてきたのです。
なのに、運行実施計画が遅すぎるって、、、、「未来への挑戦」が挑戦的でなかったってことですね。情けない!
99もの事業が2027年での運行を目指しているのに、それより遥かに遅い計画で「未来への挑戦」って、バカも休み休み言ってほしいものです。
実は、私は以前からそのようなことを指摘していました。2021年の時点で茨城県境町が国交省が目指すレベル4(運転士も保安員もなし)で定常運行し、その後、いくつもの自治体がそれに続きつつありますからね。「『未来への挑戦』って、すでにもう後発だよ」と教えてあげたんですが・・。
※境町の自動運転バスと同町のHP
https://www.town.ibaraki-sakai.lg.jp/sp/page/page002440.html
動かなかった永藤市長
それにしても、なぜこんな初歩的な情報を得られていなかったのでしょうか?(堺市当局は国交省が2027年を目指しているのは知っていたが、そこに合致せずとも不採択にならない、大丈夫だと思い込んでいた)
民間企業で想像してみてください。
社長肝いりの事業で、役員会や株主総会の批判的意見を押し切って進めたのに、「顧客が求めているスケジュールに合いませんでした」なんていう杜撰な理由で失注したら。
当然、責任問題です。
情報を得られなかった理由は、永藤市長が動かなかったから。
私はそう思っています。(多くの議員がそう思っています)
永藤市長は決定前の国交省への働きかけについて訊ねられると、「〇〇を通して・・」と答弁しています。一方、不採択決定後については「私が直接・・」と答弁しており、つまりは「事前には直接動かなかった」ことを暗に認めているのです。
民間企業でも、「わざわざ社長が来たのなら」と、何らかの情報を出してしまうものです。
市長が『直接』国交省に足を運び、働きかけていたならば、これしきの情報(「スケジュールが重要」という情報)は得られていたでしょうし、99もの事業が採択される中から漏れるなんてことは、まずなかったでしょう。
前の竹山市長は、毎月のように上京し、中央省庁や与党に陳情・要望活動を行っていました。
議会でこれだけ揉めた市長肝入り事業なのに、なんとまあ、腰の重いことでしょうか。
市長の周囲も動かず
市長の腰が重いのですから、周囲も当然そうなります。
建築都市局の職員は国交省に赴いていたようですが、こういう重要案件は、様々なチャンネルを駆使してアプローチすべきです(民間企業も同じですよね)。
私が見聞きした範囲(直接、間接にあちこちから情報を得ています)ですが、
市長や副市長らが、堺選出の国会議員に働きかけることはなかったようですし、
身内の維新の議員が国交省に働きかけることもなかったようです。
中央省庁との連絡調整役である堺市東京事務所も動いていないようです。
再議までしたこの案件は、いわば政治案件です。
市長本人はもとより、副市長や市長公室長がそのような要望活動や情報収集、根回しを、ちゃんと取り仕切るべきでした。
つくづく、再議の重さを分かっていないんだなぁと感じます。
報告は1ヶ月遅れ
他にも「再議の重さが分かっていない」と感じることがありました。
それは「補助金が不採択になった」という情報が、一か月以上も出されなかったことです。
国交省から不採択の連絡があったのは6月6日、我々議会に連絡があったのは7月8日です。
堺市当局は「不採択理由などが分からず、その情報収集に時間がかかった」ということを、報告が遅れた理由にしています。でも不採択理由など、後から調べて、後から追加報告すればいいだけです。
悪い情報は、とにかく一報入れる。
これって、社会人としての基本中の基本じゃないでしょうか。
永藤市長は部下に対して、それでヨシとしているのでしょうか。
不採択通知の翌日の6月7日は建設委員会でした。もし素直に報告していたら、緊急質問が飛び交って、理事者にとっては厳しい委員会になったかもしれません。
ひょっとして、それを避けるために議会が終わるまでひた隠しにした・・と勘繰るのは私だけでしょうか。
市長のやる気が問われている
もう一つ解せないのが、市長が補正予算を出さなかったことです。
今回、アテにしていた国交省の補助金は7600万円(※)です。
それが出ないがために、今年度の実証実験は中止となりました。
(※)冒頭のニュース記事には「1.6億円」とありますが、それは本年3月時点の見込み額で、実際に5月に申請した額は7600万円です。
ハッキリ言って、堺市の財政規模から考えれば「たかが7600万円」です。
本っっっっ気で市長がやりたいことならば、基金を取り崩してでもやればいいんです。「金がない」と言い続け、溜め込んだ基金が200億円以上ありますから(永藤市政になってから増やした分)。
※堺市の基金残高の推移。水色の財政調整基金と薄水色の「その他特定目的基金」が使いうる基金であり、永藤市長就任以降で200億円以上増加している。
そこから7600万円を拠出することなど、容易いことです。
そしてその補正予算案を提出し、議会で自身の本気度と、事業の必要性について堂々と主張すればいいのです。
当然、単純に出すだけでは否決されるでしょうから、出すならば周到な準備、根回し、水面下での議会への説明が欠かせません。
それらの行動も含めての市長の本気度です。
市長の肝入り事業として打ち上げ、再議権まで行使してゴリ押ししておいて、国交省や国会議員への要望活動や、議会への根回しのような、自分が汗をかくことは一切しない。
この事業に対する市長の本気度とはこの程度のものかと、私を含め多くの議員が呆れています。
それに付き合わされ続けている、職員や事業者が気の毒でなりません。
この期に及んでは、極めて不透明な来年度の補助金採択を目指すのではなく、地に足つけて、事業者も利用者も議会もが納得する計画に見直すべきでしょう。具体的には、廃止が危惧される郊外の赤字路線への適用です。
民の力でどうしようもないことにこそ、市長・行政は本気になるべきなのです。
今回の不採択は、まっとうな計画に仕切り直すための、絶好の機会だと思います。
が、過ちを認めたくない市長は、その機会を見過ごしてしまうのでしょうね。残念です。
堺市議会議員ふちがみ猛志
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